フードデリバリーの仕事を検討している方のなかには、以下のような悩みを抱える方もいるのではないでしょうか。
「フードデリバリーの仕事は確定申告が必要なのだろうか」
「確定申告をしないとどんなリスクがあるだろう」
「フードデリバリーの仕事の経費とは?」
本記事では、フードデリバリーの仕事をするにあたって、確定申告が必要なのかどうかを、ケース別に解説します。
また、確定申告をしないことによるリスクや、フードデリバリーの配達員が経費にできる具体例なども紹介していますので、参考にしてください。
目次
フードデリバリー配達員の確定申告の必要有無について
フードデリバリーの配達員の確定申告の必要有無は、「働き方」と「所得」の2点によって決まります。というのも、フードデリバリーの配達員としての働き方は、人によってさまざまだからです。
専業でフードデリバリーの仕事に取り組む方もいれば、会社員をしながら副業で取り組む方、学生がアルバイトとして働く場合など、それぞれ状況が異なります。
ここからは、フードデリバリーの配達員の確定申告の有無について、3つのケースを例に挙げて解説します。
1.専業でフードデリバリーの仕事をしている場合
専業でフードデリバリーの仕事をしており、なおかつ年間の所得が基礎控除額の48万円を超えると、確定申告が必要です。所得とは、フードデリバリーの仕事で得た収入から経費を差し引いた額を指します。
専業でフードデリバリーの仕事をするということは、企業に雇用されるのではなく「業務委託契約」となります。この場合、企業に雇用されておらず年末調整が行われないため、自分で確定申告をする必要があります。ただし、業務委託契約で働いていても、年間の所得が基礎控除額の48万円を超えない場合は確定申告が不要です。
なお、専業であっても業務委託契約ではなく、アルバイトとして企業に雇用されている場合は、企業で年末調整を行うので確定申告の必要はありません。
2.副業でフードデリバリーの仕事をしている場合
副業でフードデリバリーの仕事をしている場合は、年間の所得が20万円を超えると確定申告が必要です。ここでいう所得も、フードデリバリーの仕事で得た収入から経費を差し引いた額になりますが、他にも副業を行っている場合は、すべての副業の所得合計で判断します。
3.大学生でフードデリバリーの仕事をしている場合
大学生でフードデリバリーの仕事をしている場合は、専業と同じく年間で基礎控除額の48万円を超える所得が発生した際に、確定申告が必要 となります。他にも仕事をして収入を得ていれば、それらすべてを含めた所得から判断します。
ただし、大学生の場合は「勤労学生控除」というものがあり、一定の条件を満たした場合、基礎控除の48万円に27万円の控除を追加できるため、確定申告をするかどうかを判断する所得合計金額は、年間で75万円になります。
勤労学生控除が適用されるための条件は、以下の3つです。
例えば、フードデリバリーの仕事で収入を得ており、その所得金額が年間75万円以下で、その他の所得が10万円以下の学生に勤労学生控除は適用されます。
勤労学生控除が適用できるかどうかでよくあるのが、「親からの仕送りは計算に含めるのか」という疑問です。
仕送りはあくまでも贈与であり、勤労による給与所得ではないため、勤労学生控除を判断する所得として考える必要はありません。フードデリバリーの仕事以外に、短期間のアルバイトなどをしていた場合は、所得として計上する必要があります。
フードデリバリー配達員が確定申告を怠った時のリスク
フードデリバリーの配達員は、契約形態や所得に応じて確定申告が必要となるケースがあることを解説してきました。では、確定申告が必要であるにもかかわらず申告を行わなかった場合、どのようなリスクがあるのでしょうか。
確定申告を行わなかった場合は以下のようなペナルティが発生します。
- 無申告加算税
- 延滞税
それぞれ、どのようなペナルティなのか解説します。
無申告加算税
無申告加算税とは、確定申告の期限である3月15日までに申告を行わなかった際に課税される税金であり、正しく申告していれば払う必要のなかった税金が追加されるものです。
以下の3つの算出方法で無申告加算税の金額を計算します。
- 納付税額が50万円以下:15%
- 納付税額のうち50万円を超える部分:20%
- 税務署の調査を受ける前に自主的に申告をした場合:5%
税務署から指摘される前に申告をすれば、確定申告期限後であっても5%の課税で済みます。しかし、それ以降になると納付税額によって、15%から20%の課税になります。
延滞税
延滞税とは、納税期限までに税金が納められなかった場合に課税される税金です。納税しても、期限後の納税になった場合は延滞税が発生します。
延滞税の算出方法は、納税期限翌日から納税されるまでの日数に応じて、以下のように計算されます。
納付すべき本税の金額×延滞税の割合×期間(日数)=延滞税の金額
延滞税の割合は、延滞している期間によって異なります。納税期限を過ぎてから納税するまでの期間が長くなると、その分税率が上がり、延滞税の金額も高くなっていきます。
延滞税の割合については国税庁の公式サイトでご確認ください。
フードデリバリー配達員が確定申告を行う2つの方法
フードデリバリーの配達員が、確定申告を行う方法は2種類あります。
- 白色申告
- 青色申告
それぞれがどのような申告方法なのか、メリットやデメリットとともに見ていきましょう。
白色申告
白色申告は、複数の科目を記入する複式簿記ではなく記入項目が少ない単式簿記で記帳が可能です。そのため、収支内訳書には、売上や経費のみの記入で問題ありません。
非常にシンプルで簡単に確定申告を行える点が、白色申告のメリットといえます。ただし、白色申告では「青色申告特別控除」を受けられません。そのため青色申告に比べると、納税額が高くなるケースがあります。
また青色申告では、事業における損失(赤字)を最長3年間繰り越すことが可能ですが、白色申告では赤字の繰り越しもできません。
このようなことから、白色申告は節税の観点で見た場合はデメリットが多い申告方法といえます。
青色申告
青色申告は、前述した通り「青色申告特別控除」が受けられます。そのため、55万円の控除を受けることが可能です。さらに、e-Taxを利用して確定申告を行うと控除額が65万円に増額できます。
このように、青色申告特別控除による節税効果が青色申告の最大のメリットといえます。さらに赤字も最大3年間繰り越すことが可能です。
また、家族を従業員としていた場合は専従者給与として経費にすることが可能です。専従者給与は白色申告でも利用できますが、配偶者で86万円、その他親族なら50万円までと決まっています。一方、青色申告は基本的に専従者給与の上限がないため、全額経費にできます。
ただし、青色申告を行うには、事前に「青色申告承認申請書」を税務署に提出しなければなりません。複式簿記で帳簿を付ける必要もあるので、白色申告に比べて手間がかかる点がデメリットといえます。
フードデリバリー配達員が確定申告の際に計上できる経費について
フードデリバリーの配達員が確定申告をする際、経費を計上することがあります。
経費を計上すれば、課税所得を減らせるので節税効果が期待できます。しかし、経費に計上できるものとできないものがあるので、正しく理解した上で計上しなければなりません。
ここでは、フードデリバリーの配達員が経費として計上できる主な項目や、具体的な経費の計上方法について詳しく解説します。
フードデリバリーの配達員が経費計上できる主な項目
フードデリバリーの配達員が、経費として計上できる主な項目には、以下のようなものがあります。
- 配達で使うバイクや自転車の購入代金
- 配達で使うバイクや自転車のメンテンス代
- 配達で使うバイクのガソリン代 など
上記を見てわかるように、経費として計上できるのは、「配達」にかかわる費用のみです。配達に関係のない費用を計上すると、あとで税務署から指摘を受ける可能性があるため、正しい判断が必要です。
使用物がプライベートと混同する場合の経費計上方法
フードデリバリーの仕事をしている方のなかには、私物の車やバイクを配達に利用している方もいるでしょう。
このような場合、ガソリン代はどのように経費として計上するべきなのでしょうか。
この場合は、「家事按分」という考え方のもとで経費を計上します。家事按分とは、個人的に使用している部分と、事業(配達)で使用している部分を、使用割合によって分ける考え方です。
つまり、配達に使う車やバイクのガソリン代のうち、実際に配達に使っている分だけを、経費として計上します。具体的には、配達の際の走行距離を記録しておき、そこからガソリン代の何割が経費になるかを計算します。
高額な資産を購入した時の経費計上方法
配達にかかわるものを購入した場合、経費にすることは可能ですが、購入したものの金額が高額な場合は経費としての計上方法がやや異なります。
例えば、フードデリバリーの仕事のためにバイクを購入したケースが該当します。
こうした高額な経費については、「減価償却」という考え方にもとづいて複数年かけて経費として計上します。
また、減価償却には2種類の方法があります。ひとつ目は「定額法」といい、以下の計算式で計上します。
取得価額×定額法の償却率
ふたつ目は「定率法」といい、以下の計算式で計上します。
未償却残高×定率法の償却率
定額法は計算が簡単であり、特別な理由がない限り、減価償却といえば定額法で計上されます。一方、定率法は、定額法に比べて初期の償却費が高くなるため、直近の節税効果が期待できるメリットがあります。
なお、減価償却をするかどうかの判断基準は、購入品の価格が10万円を超えるかどうかによります。10万円以下の場合は消耗品費として扱うため、減価償却はせず一括で経費として計上します。また青色申告の場合は、30万円までなら一括で計上することも可能です。
まとめ
フードデリバリーの仕事は、自分のペースで働けるため、近年人気の職業のひとつとなっています。しかし、フードデリバリーの配達員になる場合、確定申告について正しい知識を持っておく必要があります。
確定申告が必要かどうかは、働き方や所得によって異なります。確定申告が必要であるにもかかわらず、確定申告を怠ると無申告課税や延滞税などのペナルティを受ける可能性があるため気をつけましょう。
また、確定申告を行う際、経費について正しく理解していると節税することも可能です。
今後フードデリバリーの仕事を検討している方は、確定申告について正しく理解した上で、以下の記事を参考に自分に合ったフードデリバリーサービスを見つけてみましょう。
(1)給与所得などの勤労による所得があること
(2)合計所得金額が75万円以下(令和元年分以前は65万円以下)で、しかも(1)の勤労に基づく所得以外の所得が10万円以下であること
(3)特定の学校の学生、生徒であること
(引用元:国税庁)